7月8日 →バンコク





<第十一日>


 フライト中に日付が変り、7月8日となったこの日の朝7時過ぎ、タイ・バンコクのドン・ムァン
国際空港に無事到着。


 今回の旅行では、帰途にタイで一泊するという「オマケ」を用意しておきました。入国手続きを
済ませ、電車に乗るため空港の外に出ます。暑い!ヨーロッパも連日暑い日が続きましたが、
それとは比べ物にならない位湿度が高くムシ暑かったです。


 これには参りましたがそれでも何とか切符を購入し、やってきた列車に乗車。タイ国鉄の車
両は形式がとても古く、冷房は古ぼけた扇風機が回っているのみ。もちろん客車の窓は全開
です。その上乗客はほぼ満員。


 その様は、あたかも終戦直後の我が国の復員列車を思い起こさせます(直に見た訳じゃない
けど・・・)。車窓からは、熱帯ののどかな田園風景が広がっていました。





 数十分の後、着いた所がアユタヤー。かつて14世紀より、400年以上にわたってタイ王国の
都が置かれたところです。駅を出るとすぐに、3輪タクシー「トゥクトゥク」の運転手が客引きにや
って来ました。しかし自分のペースで自由に見て回りたかったので、自転車を借りることにしま
す。一日約90円と格安!


 サドルに跨り、颯爽と走り出します。そして向かった所がワット・ヤイ・チャイ・モンコン。大きな
御釈迦様が寝そべる姿が特徴的な、アユタヤーを代表する仏教寺院の一つです。先日はヴァ
チカンを訪れたばかりですが、その完璧なまでに異なる両者の宗教観の違いを見比べるのも
面白いです。






自転車を借りる。1日何とたった90円




ワット・ヤイ・チャイ・モンコン



 さらにそこから程近い日本人村へ向かいます。ここは16世紀から17世紀にかけて栄えた日
本人の居留地です。 敷地内にある記念館には、日本人義勇隊長として活躍し、タイの爵位を
得るまでに至った山田長政の銅像が展示されていました。訪れる観光客の大半は筆者を含め
た日本人ですし、土産物屋では日本円で普通に買い物が出来ます。このような場所も珍しいで
すね。






アユタヤー日本人村




山田長政像



 日本人村を後にし、アユタヤーの中心部へ向かいます。途中、舟にて川を渡りますが、自転
車込みで約15円とメチャクチャ安かったです。川を渡りきり、再びペダルを漕ぎます。着いた所
がワット・プラ・マハータート。400年以上にわたって栄えたここアユタヤーですが、1767年にビ
ルマ軍の侵攻を受け、王宮や寺院は徹底的な破壊を受けてしまいました。その時に落とされ
た仏頭が、木の根に取り込まれてしまっています。赤茶けたまま放置されている寺院跡からも
痛々しさが伝わってきます。


 遺跡のすぐ隣ではヨーロッパからの観光客が、ゾウに乗ってノンビリと「遊覧歩行」を楽しんで
いました。まるでこの辺りは時がゆっくりと流れているかのようです・・・。






渡し舟で川を渡る・・・




ワット・プラ・マハータート





木の根に取り込まれてしまった仏頭




ゾウに乗って楽しむ観光客



 それにしても暑い!何度も清涼飲料を買って飲みますが、すぐに喉が渇いてしまいます。ハ
ッキリ言って体がもちません。充分観光を楽しんだので、自転車を返却し、本日の宿を探しま
す。ガイドブックに載っていた、とあるホテルに飛び込みました。冷房完備でシングル一泊約
1500円と激安!それでもこのホテルでは最高クラスの部屋だそうです。また、1階部分に大き
なレストランが設けられているなど、使い勝手も抜群でした。





 夜は、オランダから来たツーリストと話しをする機会がありました。最近は物価の安い東南ア
ジアに出かけるヨーロピアンたちが増えているとのことです。とりわけユーロ導入後の欧州はイ
ンフレが激しく、オランダ人の彼は「通貨がギルダーだった頃に比べ、物価が約2倍になってし
まった。それでも僕の給料は増えてないからイヤになっちゃうよ」とこぼしていました。2002年に
統一通貨・ユーロが導入されて以来、煩わしい両替の手間はなくなりましたが、それまでの通
貨があまり強くなかったイタリア、オーストリア、オランダ、スペインなどでは物価が上昇し、失
業問題なども引き起こしています。これからEU諸国が、どのようにそれらの問題を乗り越えて
いくか静かに見守りたいものです。





 彼にオヤスミを告げて部屋に戻り、エアコンのスイッチを入れます。涼しい!極めて当たり前
のことですが、今宵ほど文明の利器のありがたみを強く実感させられた夜はありませんでした
…。