7月6日 ベルン→フィレンツェ→ローマ





<第九日>


 昨日の雨も何とか上がり、無事リスタートを切ります。ベルン駅よりローカル線にてブリークに
向かい、さらにそこからヴェネチア行きの国際列車「チザルピーノ」に乗り換えます。ここでの乗
り換え時間はわずか6分間と若干タイトでしたが、世界一正確と称されるスイスのタイムスケジ
ュールは筆者のそんな杞憂を吹き飛ばしてくれました。


 ブリークを発つとすぐに列車は全長約20キロに及ぶ国境越えのシンプロン・トンネルに差し掛
かります。このトンネルが開通したのが、今から丁度100年前の1906年。言語を絶するような難
工事であった事は想像に難くありません。





 トンネルをくぐり抜け、イタリアに入った列車はマッジョーレ湖畔の保養地・ストレーザを過ぎ、
ますます加速力を強めていきます。


 そして昼過ぎ、ミラノ中央駅に到着。ここで列車を乗り換えます。1931年、時の宰相B.ムッソ
リーニが国の威信を懸けて造らせたという駅舎の構えは、さながら宮殿の如く実に堂々として
いました。






宮殿のようなミラノ中央駅




駅舎内部の彫刻も見事





チザルピーノ




エウロスター



 ミラノからはイタリア自慢の高速列車・エウロスターにてさらに南下。エミリア・ロマーニャの中
心都市・ボローニャをパスし、着いた所がルネッサンスの都・フィレンツェ。駅前に佇む荘厳な
サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の横を通り抜け、向かった所がジョヴァンニ広場。


 さらにここに建つジョットの鐘楼に登ります。またしても汗まみれになってしまいましたが、塔
頂部からは旅行パンフレットなどでもお馴染みの、フィレンツェの美しい街並が眼下に広がって
いました。ここフィレンツェは、さながら街全体が美術品であるかのような印象を受けます。とり
わけ「ドゥオモ」の愛称で親しまれているサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の壮麗な姿に
は、大いなる感動を覚えました。






サンタ・マリア・ノヴェッラ教会




ジョットの鐘楼






フィレンツェの美しい街並






サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂





 この街が、ヨーロッパの中心地として華々しく歴史の表舞台に登場した時代は14世紀。豊富
な資金力をバックに、絶大なる権勢を誇ったメディチ家の隆盛と歩みを等しくします。


 トスカーナ大公としてこの地に君臨したメディチ家は、数多くの芸術家たちを庇護しました。そ
こに花開いた「ルネッサンス」は、今もって世界中の人々を魅き付けて止まない魅力を持ってい
ます。


 ジョヴァンニ広場を後にし、シニョーリア広場へ歩を進めます。ミケランジェロ作「ダヴィデ像」
のレプリカが正面に展示されているヴェッキオ宮殿(現在は市庁舎として使用されている)の傍
に建つ美術館が、フィレンツェ観光の目玉の一つであるウフィツィ美術館。ボッティチェリ作の
「ヴィーナスの誕生」や、ダヴィンチ作の「受胎告知」など、世界屈指の名画を心ゆくまで堪能し
ます。






ダヴィデ像




ヴェッキオ宮殿



 美術館見学を終え、アルノ川に面する地点に出ました。そこからはフィレンツェ最古の橋の一
つ、ポンテ・ヴェッキオを望むことが出来ます。1階部分は数多の貴金属店が並ぶショッピング
モールですが、上階部分はヴェッキオ宮殿と、対岸にあるピッティ宮殿とを結ぶ連絡通路にな
っているとのことです。






ウフィツィ美術館




ポンテ・ヴェッキオ



 芸術の都を離れ、再びエウロスターに乗り込んでさらに南下。約1週間ぶりにローマへと戻り
ます。ヨーロッパ最後の夜は、ローマ・テルミニ駅近くにある交通至便のユースに投宿すること
に決めました。