7月5日 →ベルン→クライネシャイデック→ベルン





<第八日>


 とある駅にて列車が停車したのを機に目が覚めました。スイスのジュネーヴです。腕時計と
手元の時刻表とを照らし合わせてみたところ、ここでも1時間ほどの遅れが生じていることが判
明しました。






車窓よりレマン湖を望む

 長距離を走る国際夜行列車の場合、途中で
ある程度の遅れが生じてしまうのは致し方な
いことなのかもしれません。しばらくすると今度
は車窓右手に美しい大きな湖が見えてきまし
た。


 レマン湖です。やがて列車はローザンヌを経
由してスイスの首都・ベルンに到着。筆者はこ
こで下車し、韓国のツーリストたちと別れまし
た。


 ここベルンは一国の首都とはいえ随分小ぢ
んまりとした印象を受けます。



 また、世界大戦などの戦禍を被らなかったた
め、中世以来からの由緒ある建築物も多く残
されており、街全体が世界遺産に登録されて
います。


 街を流れるアーレ川の水も清らか。市街地東部には、この街のシンボルともいえるクマが飼
育されているクマ公園もあります。





ベルン旧市街




クマ公園



 ひとしきり街歩きを楽しんだ後、再び駅に戻ります。ここからはローカル線にて、湖のあるトゥ
ーンへ。


 さらに遊覧船に乗り換え、トゥーン湖のクルージングを楽しみます。湖面を吹き抜ける風が大
変心地良かったです。デッキからは、水際に建てられたシャダウ城やシュピーツ城などの秀麗
な古城の佇まいはもちろん、彼方に聳えるニーセンやニーダーホルンといった雄大な山々の
姿をも望むことが出来ます。






トゥーン湖をクルージング




シャダウ城





シュピーツ城




ニーセン



 2時間あまりのレイク・クルーズの後、船はインターラーケンに到着。ここからはアルプス・登
山列車旅のスタートです。


 まずはインターラーケン東駅よりベルナーオーバーラント鉄道に乗り、そしてラウターブルン
ネン駅にてヴェンゲンアルプ鉄道に乗り換えます。この鉄道は線路幅が800oと狭いので、そ
れに合わせて客車も一回り小さく作られています。


 しかし、最大250‰という急勾配を登るため、レール間にはアプト式と呼ばれる独特の鋸状の
歯が設けられていました。おまけに驚くべきことに、開通したのが今から100年以上も前の1893
年!当時の技術水準の高さとともに、先人たちの開通にかける執念に改めて敬意を表せずに
はいられません。






「アプト式」と呼ばれる独特の登山列車用線路




車窓に4000m級の山々が迫る



 そしてついに、列車は終点のクライネ・シャイデックに到着。スイスアルプスの象徴ともいえる
このエリアには、山小屋の向こうにアイガーやメンヒ、さらにはユングフラウといったヨーロッパ
を代表する名峰が、手の届かんばかりに聳え立っていました。







アイガー・北壁






ユングフラウ






メンヒの山裾を征く登山列車




ヴェッターホルン



 レストランにて昼食を済ませ、山岳ハイキングを楽しみます。途中、アルピグレンの駅に向か
うコースからは、切り立った岩肌で多くのクライマーたちの命を奪ってきたアイガー北壁の様子
も間近に目にすることが出来ます。さらに、キンバイソウなどの高山植物が咲き乱れる丘陵の
向こうには、一幅の絵画を思わせるようなヴェッターホルンの雄々しい姿を望むことが出来まし
た。





 約1時間ほどハイキングを楽しみ、アルピグレンより再び列車にて下山開始。しかし、丁度グ
リンデルワルトで乗り換える辺りから雲行きが怪しくなってきました。そしてインターラーケンに
戻る頃には完全な土砂降りに。山の天気は変りやすいとはよく言ったものですね。もう1時間ほ
ど下山が遅れていたらヌレネズミになるところでした。その後は再びローカル線にてベルンに
戻り、予約を入れておいたユースにチェックインしました。