3月13日 ワシントンDC→アバディーン→フィラデルフィア





<第六日>


 ユースをチェックアウトし、地下鉄でワシントン中央駅へ向かいます。ここからはまたアムトラ
ックの旅です。といっても前回のような長距離移動ではなく今回は1時間のみのショートトリッ
プ。筆者を乗せたアムトラックはやがて周りにほとんど何もないような無人駅に到着しました。





 メリーランド州アバディーン。降りた客は筆者を含めわずか数人のみ。何故このような辺鄙な
場所に来たのかというとここにはU.S. Army Ordnance Museumという博物館があるんです。し
かし、その博物館にはどうやっていけばいいのだろう?


 とりあえずバス停を探してみたのですが、あるのはわずかに1日に1本だけ運行されていると
いうグレイハウンド長距離バスの停留所のみ。これでは意味がありません。どうやら簡単にい
ける場所ではなさそうだぞということで、直接そのミュージアムに電話をかけてみました。


 そうすると約3マイル程あるのでキャブ(タクシー)を使うのがいいとのこと。事前にここの電話
番号を控えておいたのは正解でした。


 近くのコインランドリーからタクシー会社に電話をかけ、駅を待ち合わせ場所に指定。待つこ
と約10分、ようやく古めかしいアメ車のタクシーがやってきました。それに乗り込み、なんとか博
物館の入り口(検問所)へ到着。しかし、やたらに警備が厳しい模様・・・。ここにも同時多発テ
ロの影響が現れていました。


 それもその筈でここは博物館といっても立派な軍の施設であり、隣には大きな空軍の基地ま
であります。パスポートをチェックされ、いくつかの質問を受けました。事前に許可等を得ていな
い筆者のような外国のイチゲン客はどうやらゆっくりと見学することが難しいようです。また、帰
るときにまたタクシーを呼ぶ手間も面倒なのに加え、ここの敷地もメチャクチャ広いので、その
ままタクシーに乗って敷地内を周ることにしました。





 しかし!筆者にとっては短いながらも夢のようなひと時でした。入り口から入ってすぐの所に
はなんと旧ドイツ軍のW号戦車が展示してあるではないか!それにアメリカのスチュアートも!
さらにしばらく行った所で筆者を待ち受けていたものは数十台にわたって並べられた歴戦の戦
車群!うおお!ソ連(ロシア)のT34−76だ!それにイギリスのチャーチル!こっちにはドイツ
のパンサーやロンメル(古い!正式名称はヤークトパンサー)もあるぞ!このヘナチョコくさい
戦車は日本の九七式チハじゃないか!おや?何だこの天を衝く巨大な砲身は…アァッ、あの
伝説のレオポルド列車砲ではないか!!


 弾丸の直径が280mmというこの巨大な化物列車は、射程距離約60kmを誇ります。ドイツ軍
が占領下に治めていたフランスから放たれた弾丸は、遥かドーヴァー海峡を越え、多くの英国
国民を恐怖に陥らせたとのことです。






W号戦車(独)




T34−76(露)





チャーチル(英)




ヤークトパンサー(独)




九七式チハ(日)




レオポルド列車砲(独)



 思う存分、戦車オタクとしての本懐を遂げた筆者は夢心地のまま再びタクシー会社のオフィ
スに戻りました。運転手にお金を払い、たまたま近くにあったマクドナルドで時間をつぶします。


 


ここは知る人ぞ知る田舎町、なんせ電車の本数が少ないんです。夕闇迫る午後6時過ぎ、駅
に戻ります。ようやく彼方から電車の明かりが見えてきました。どうやら今日はほとんど遅れて
いないようです。列車に飛び乗り、車内の暖かさにようやく人心地。


 筆者はそのまま、アバディーンより北東100kmの所にあるペンシルベニア州・フィラデルフィ
アに入りました。