3月17日 ニューヨーク→ボストン





<第十日>


 三夜を過ごしたホステルを離れ、タイムズスクエアに程近いポート・オーソリティ・バスターミナ
ルへ。グレイハウンドバスのチケットカウンターでボストン行きのワンウェイチケットを購入しま
す。


 待つこと約30分、AM10時定刻通りバスはスタートしました。インターステートハイウェイを北
上していきますが、ニューヨークを離れるに従って風景はよりカントリーサイドな色合いを濃くし
ます。樹々の間に降り積もった残雪も徐々に目立つようになってきました。


 途中のパーキングエリアでトイレ&軽食休憩をはさみ、さらに北上。コネチカット州をパスし、
マサチューセッツ州に入ります。





 そして午後2時過ぎ、ようやく今回の旅の最終目的地であるボストンに到着。やはり、今まで
の都市と比べて寒いです。それもその筈で緯度的には日本の札幌とほとんど変わらないこの
街は、冬場の最低気温がマイナス10度に達することも珍しくありません。


 3月も半ばを過ぎ、ようやく動きやすくなってきたというところでしょうか。それにしてもわずか
10日前に訪れたニューオーリンズが、日本の屋久島とほぼ同緯度であることを考えれば実に
遥かな旅です。


 バスを下車した筆者はトークンと呼ばれるコイン状の切符を買い、地下鉄にて旧マサチュー
セッツ州会議事堂へ。1713年建造というこの建物は、ボストン最古を誇っています。


 建築当初は、イギリスの植民地政府が置かれていたそうです。その後、約60年余りたった


1776年、フィラデルフィアで採択された独立宣言が高らかに読み上げられたのもまさにこの
建物でした。今では行政的役割をすべて他の建物に譲り、博物館としてその見守り続けてきた
歴史を、今日に伝えています。






旧マサチューセッツ州会議事堂




現在、内部は博物館に



 旧州会議事堂をあとにし、道路上にペイントされた赤いラインに沿って進みます。この赤い道
が「フリーダムトレイル」と呼ばれる観光客の強い味方。なんとこのラインに沿って歩くだけで、
ボストン市内の主な歴史的観光名所を周る事ができてしまうんです。


 まず、歩き始めてすぐの所にあるのがボストン虐殺事件跡地。1770年、イギリス兵が5人の
植民地市民を殺害した現場です。この事件が導火線となり、アメリカ独立の気運は高まってい
きました。そして5年後の1775年、かの独立戦争の火蓋が切られることになります。





 さらにフリーダムトレイルを進み、着いた所が「ポール・リビアの家」。"真夜中の疾駆  Paul
Revere's Ride"で知られるアメリカ独立の英雄。独立戦争勃発直前の1775年4月18日、イギ
リス軍の攻撃目標を味方に通報するためレキシントンまで馬を走らせ、窮地をしのいだ逸話は
有名です。


 家の中は見学できるようになっており、18世紀の庶民の暮らしぶりを窺い知る事ができて興
味深いです。近くには馬に跨る彼の勇ましい銅像が建っています。


 さらに歩を進めると、スマートな白い尖塔を持った教会が見えてきました。ボストン最古といわ
れるオールドノース教会。創設は1723年というから独立戦争が始まる50年以上も前から建
っていた事になります。これだけ古い建物は、歴史の浅いアメリカにおいてはかなり珍しいで
す。






独立の英雄 ポール・リビア




オールドノース教会



 アメリカでありながら、ほのかにヨーロッパの雰囲気を至る所に漂わせている街、そんなイメ
ージを抱かせてくれるのがここボストンではないでしょうか。